1.前置胎盤

 胎盤は通常、子宮底部または体部、すなわち赤ちゃんに対して子宮の出口よりも遠い方に位置しています。ですからお産の時も、赤ちゃんの後に胎盤が出るのが普通であり、それ故にあと産と言われます。
 この胎盤が子宮の出口の部分を覆ってしまっているものを前置胎盤といい、出口を覆っている状態により、辺縁前置胎盤、部分前置胎盤、全前置胎盤などと呼ばれます。
 妊娠中期から後期にかけて、痛みもなく突然に大出血を起こすのが特徴です。 妊娠初〜中期にも前置胎盤で出血することがありますが、大出血になることは少ないようです。また、この時期には前置胎盤の状態でも、子宮が大きくなるのにつれて胎盤の位置は上方へと移動していくことも多く、最後まで前置胎盤のままでいることのほうがむしろ少ないと言えます。
 治療は、出血がおさまるものは安静と子宮収縮を抑える治療で経過を観察しますが、出血がおさまらないもの、あるいは再度大出血を来したものは、帝王切開にて分娩とします。

2.常位胎盤早期剥離

 胎盤は正常の位置に付着しているけれども、その一部が妊娠中または分娩中にはがれてしまう状態を言います。
 通常、妊娠後期に、激痛をともなって出血しますが、前置胎盤ほどに大出血を起こさない場合が多く、また痛みの間欠時に出血が増量するという特徴があります。
 妊娠中毒症がベースにあることが最も多いのですが、この他にも高血圧、腎臓疾患、感染症などのために起こることもあります。

*DIC(播種性血管内凝固症候群)*
 この疾患で最も怖いことは、急速に胎盤と子宮の間に形成される血腫が原因となり、血管内で血液凝固を起こしやすくなって、できた血栓があちこちの毛細血管で塞栓をおこすということ、それと同時に凝固因子が大量に消費される結果として出血した部分で血液が固まりにくくなり出血が止まりにくくなることです。これをDIC(播種性血管内凝固症候群)といい、死に至ることも珍しいことではありません。

 治療は、原則的には帝王切開による分娩です。分娩中で分娩の進行が早く、しかも軽症であれば、吸引分娩などで分娩を短時間で済ませるようにすることもあります。


3.妊娠中毒症

 妊娠中、特に妊娠後期に起こる、高血圧、蛋白尿、浮腫を主徴とする疾患です。全妊婦のおよそ10%に見られ、また初産の方に多く見られます。妊娠中にはかなり全身的な病状を呈しますが、妊娠が終了するとともに急速に病状が軽快し後遺症を残すことが少ないのも特徴です。しかしその一方で、重症妊娠中毒症は母胎の周産期死亡の原因として分娩前後の大出血と並んで最も多く、かつ死亡率の高いものであることも事実です。
 妊娠中毒症が関連する問題点としては、
  1.子宮内胎児発育不全あるいは子宮内胎児死亡
   2.低出生体重児、新生児死亡
  3.子癇発作
  4.常位胎盤早期剥離、その結果としてのDIC
  5.脳出血、腎不全、肝不全、他全身的症状
 などがあげられます。3.〜5.は母体死亡にもつながります。

 原因がつかめていないとはいえ、その病態は解明されつつあり、その結果妊娠中毒症は決して予防できないものではないことがわかっています。
 では、その予防には何が必要なのでしょうか?
 まずは食事です。動物性脂肪や甘味類の過剰摂取、塩分の過剰摂取などは特に注意が必要です。そして、適当な運動、充分な睡眠なども発症予防には大切です。そして、何よりきちんと妊婦検診を受け、先生の指導を受けることでしょう。
 では、妊娠中毒症になってしまった場合には?
 食事としての基本は減塩・減水分摂取、低脂肪・低カロリー、高蛋白です。  軽症の妊娠中毒症の場合は身体を安静に保つこと(一日数回休む程度でもかまいません)でも充分なことが多いですが、重症の場合には入院の上管理(安静、高血圧治療、抗凝固剤やビタミン剤投与など)が必要となります。
 状態が悪くなければ自然分娩も可能ですが、胎児発育が悪かったり高血圧がうまく管理できない場合などでは帝王切開により分娩することになります。

*子癇(しかん)*
 妊娠中毒症では、時に子癇発作を起こします。
 まず初めには、頭痛、めまい、視野の異常などの前駆症状があり、次に小刻みに震えたり口がガクガクしたり白目をむいたりの症状が出たあとに、突然けいれんを起こし、暴れ、大きくのけぞったり口から泡を吹いたりしたあとに急に意識を失って昏睡状態に陥り、時に大いびきをかきます。時には数回これを繰り返します。古い話ですが、エクソシストという映画で少女が悪魔に憑依されてベッド上で大暴れするシーンがありますが、あれに近い状態です。
 予防はまず妊娠中毒症症状の悪化を防ぐことですが、起こってしまった場合にはまずは舌をかまぬように硬いものを口に挟むことです。その上で、鎮静剤、利尿剤、強心剤などの投与を行います。
 母胎の死亡率10%程度、児の死亡率は30%程度と言われています。

 

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